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ナース・コミット

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2022年12月14日

将来、子どもを持ちたいと考えている方々へのメッセージ #002不妊症看護認定看護師   稲川早苗

慈恵大学病院では高度で複雑な医療を行っていますが、そこでは専門看護師、認定看護師らが20分野以上の領域にわたって、日々患者さんへの看護ケアを実践しています。
今回は、不妊症看護認定看護師より、生殖にまつわる最近の話題や私たちの活動についてご紹介します。

不妊治療が保険医療に

今年2022年は、生殖領域において大きな転換期となりました。
2022年3月までは自費診療で非常に高額であった不妊治療ですが、中でも最も高度で、患者さんの医療費負担が高額であった体外受精や胚移植も含め、一部保険適用となりました。
このことにより、不妊治療に取り組んでいた方や、これから治療を頑張りたいと思っていた方にとって大きな救いとなったと思います。
またこれを機に、不妊治療について様々なメディアで取り上げられ、性や生殖について情報を目にする機会が増えたことも、ひとつ大きな変化であると考えられます。

一方で、保険適用になったことにより『病院へ行くべき』といった見えないプレッシャーを感じておられる方もいらっしゃると思います。
「保険適用になったのだから」「年齢制限があるのだから」と言われ、本当はまだ病院に行きたくないのに、あるいは本当はまだ治療のステップアップをしたくないのに、しなくてはいけない状況に追い込まれてしまうという場合もあるかもしれません。

あるいは、不妊と年齢の関連性について間違った伝わり方をしてしまうことにより、女性の焦燥感だけを煽り立ててしまっている場合もあるかもしれません。

本ページが通院の有無にかかわらず妊活や不妊治療について、不安や悩みを抱えている方々へのエールとなると幸いです。

正しい情報を得ましょう

リプロダクティブ・ヘルス/ライツという言葉はご存知でしょうか。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツとは性や生殖に関する健康と権利と訳され、妊娠を希望するかしないか、あるいは子どもをもつかもたないかなど、性や生殖に関する選択を女性が自らの意思で決められることを意味しています。

この言葉には、次の大切な要素が含まれていると考えています。
自らの意思で決定するということは、ひとりひとりが正しい知識を持って、自身の身体を正しく理解した上で意思決定をする必要があるということです。
例えば、卵子減少についてのメカニズム。今では「知らなかった」とおっしゃる方は少なくなりましたが、卵子は年齢とともに減少をしていく細胞です。そして減少スピードは個人差がありますので、場合によっては20代でも卵子がなくなり閉経を迎えることもあります。
また、卵子は年齢とともに老化をする(卵子の質は低下する)と考えられています。一般的には35歳をすぎると徐々に妊娠しにくくなり、43歳をすぎると不妊治療をしても挙児はなかなか困難になります。
精子は卵子と違って毎日つくられていますが、熱に弱いという特徴があります。また男性も女性と同様、加齢により精子の質は低下していきます。

このように、妊娠出産には年齢による限界が存在します。
そのことを知らずに、「いつかは絶対に子どもがほしいけど、今はまだかな」とか、「42歳になったら不妊治療をはじめようかな」と決めてしまうと、加齢により自身の決定を実現できなくなる可能性が高くなるため、少し注意が必要です。

また、ここでは一般的に言われていることを様々に紹介しましたが、一般論とご自身の身体とでは、必ずしも一致するとは限りません。

大切なことは、しっかり正しい知識を持ち、ご自身の身体を正しく理解すること、その上で「自分はどうしたいのか」を考えることです。

Reproductive Well-Being  〜自分がどうしたいか考えること〜

例えば、「結婚していて子どもは絶対にほしいので、積極的に妊活や不妊治療をする」というのもよい選択でしょう。
「結婚はしているけれど、子どもは自然にできればよいので、自然な夫婦生活を楽しむ」というのもよい選択です。
はたまた、「結婚は未定だが将来必ず子どもがほしいので、卵子や精子を凍結しておく」という選択をする方もいるでしょう。
「挙児が厳しいのはわかっている。でも、後悔しないためにできることは全部やりたい!」。それも、素晴らしい選択だと思います。

正しい選択とは、何でしょうか。

治療によって適応やメリット・デメリットがありますので、それらを理解することは必要ですが、一番重要なことは、Reproductive Well-Beingであると考えます。
Reproductive Well-Being (性や生殖に関する良い状態)は、自分にとって良い状態を指しますから、自分で決めた選択こそが正しい選択であると言えます。

なかには子どもを持たない選択をされた方もいらっしゃると思いますし、苦渋の選択をされた方もいらっしゃるかもしれません。
それでもReproductive Well-Beingです。精いっぱい向き合われ、精いっぱいの選択をされたのでしょうから、それはWell-Beingなのではないでしょうか。
自分の気持ちと向き合うこと、パートナーとも向き合い、自分たちなりの折り合いをつける時間は心身ともにパワーのいることであると思います。その結果選んだ選択について、自分たちが納得のいくものであれば、それはWell-Beingであると思います。

繰り返しになりますが、Reproductive Well-Beingを追求し、希望する人生を描くためには、正しい情報を得ること、そして選べる選択肢を知り、自分が自分の意思で決めることが大切です。そのためには、まずはご自分の価値観をあらためて確認することが必要であると考えます。

不妊外来ではなく、生殖全般を診て看る生殖・内分泌外来です

"慈恵大学病院生殖・内分泌科では不妊治療のほか、流産を繰り返してしまう不育治療、妊娠を目指した子宮卵巣の手術、がん治療前の妊孕性温存(がん・生殖医療)、無月経などの内分泌治療等、様々な医療を提供しております。

また、40歳未満で閉経をしてしまう早発卵巣機能不全の方の不妊治療、小児がん治療後の患児やご両親への生殖カウンセリング、思春期から30歳代までのAYA世代への生殖カウンセリングも行なっております。

母子医療センターや遺伝診療部も同病院内にある特色を活かして、妊娠を考えたその時から不妊治療、妊娠、出産、育児までをシームレスに支援できるよう、看護師間の連携も行なっております。

選択肢の多さから、「自分で決める」ということが難しいこともあるかと思います。

迷った時、困った時、悩んだ時、どうかお一人で抱えずにご相談ください。
皆さまにとってのReproductive Well-Beingを一緒に考えていきましょう。

医師が担当するカウンセリング外来 ※自費診療 
・不妊カウンセリング(当科通院中の方限定)  1回30分 5,000円
・がん・生殖カウンセリング(初診も可) 1回60分 10,000円  

不妊症看護認定看護師が担当する看護相談 
・看護相談外来  無料 

カウンセリング外来は予約制となります。
電話でお問い合わせください。
慈恵大学病院 03-3433-1111  4K生殖・内分泌科外来

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