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生殖内分泌(不妊症)

2024年07月01日 現在

部長から皆さまへ

 生殖内分泌科は、産婦人科の一部門となりますが、不妊症・不育症の治療を中心とした生殖医療と、無月経や月経不順に代表される生殖年齢女性の内分泌疾患の治療、および生殖機能に影響を与える婦人科疾患(子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・子宮内膜症)等の治療に携わっています。
 不妊治療としては、タイミング療法・人工授精(AIH)から生殖補助医療(体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植)まで、患者さんの状態に応じた治療を行っています。2022年4月より開始された生殖医療に対する保険適用にも対応しております。また、着床前遺伝学的検査(PGT-A, PGT-SR)や先進医療としての子宮内膜胚受容能検査・子宮内細菌叢検査も扱っています。
 専門外来として不育症診療も行っており、遺伝診療部と連携した遺伝カウンセリングや、次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査、ネオセルフ抗体検査等の施行も可能です。
 大学病院の強みを活かし、各種合併症のある不妊患者さんや、生殖外科手術が必要な患者さんの治療も関連他科と協力しながら行っています。また、生殖補助医療技術を用いた、生殖年齢のがん患者さんに対する妊孕性温存療法や、加齢による妊孕性低下に備える治療としてノンメディカルな卵子凍結も行っています。
 手術では、腹腔鏡下手術をはじめとする鏡視下手術に力を入れています。子宮鏡手術としては、子宮内膜ポリープに対して、シェーバー型子宮鏡を用いた日帰りでの手術を2023年度より開始いたしました。
 医師と生殖医療コーディネーターである看護師を中心として、患者さんのお話を良くうかがった上で、患者さんと一緒に相談しながら治療方針の検討を行っておりますので、是非お気軽に受診いただきたいと思っております。

 


診療医長/岸 裕司

診療内容

 当院では不妊症および不育症の専門外来を設けています。私たちは不妊症と不育症を別個のものとしてではなく、病態の一部を共有するものと考え、日々の診療にあたっています。この両専門外来間ではシームレスに治療を行い、さらには産科外来とも緊密に連携をとることで、妊娠成立から出産に至るまで、継続的な医療を提供しています。
  当院の特徴の一つとして、妊孕性に配慮した治療を行っている点が挙げられます。卵巣予備能が低下している不妊患者さん(早発卵巣不全・子宮内膜症・比較的高齢の方など)の治療や、若年がん患者さんの妊孕性温存のためのがん生殖医療に積極的に取組んでいます。また、総合病院である大学病院の特色を活かし、合併症を持つ方の治療や手術を要する難治症例にも対応しております。

下記の様なお悩みがある方はいつでもご相談ください。
- 避妊をしていないのに、1年以上妊娠しない
- 妊娠はするけれど流産や死産をくり返している
- 生理不順があり妊娠できるか不安に思っている。
- 生理の量が多く、筋腫等がないか心配
- 生理痛が強く、子宮内膜症等がないか心配
- 妊娠したいが合併症があり心配

当診療科の得意分野・特色

不妊症とは

 生殖年齢の男女が妊娠を希望し、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、1年以上にわたって妊娠の成立を見ない場合、不妊症と診断されます。ただし、医学的な介入を必要とする原因(卵管が通っていない、運動精子が少ない、等)がある場合には期間は問われません。
 不妊症の原因はさまざまです。女性のみではなく、半分近くの不妊カップルで男性側にも原因が認められると言われています。治療にあたっては、ご夫婦で外来を受診されることをお薦めします。

当院不妊症外来の特徴

 初診時には生殖医療コーディネーターである看護師も交えて患者さんのお話を良くお聞きし、系統的な検査を行った上で、患者さん毎に最適な医療が提供できる様、心がけております。
  一般不妊治療では、タイミング療法や排卵誘発治療、人工授精(300周期/年程度)を行っています。
  生殖補助医療(ART)は、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)および凍結融解胚移植治療を行っており、採卵件数は年間200程度です。ART反復不成功または複数回流産の患者さんを対象に、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)も施行しております。また、先進医療として、子宮内膜胚受容能検査・子宮内細菌叢検査(ERA, EMMA/ALICE)も行っています。
  40歳以降の不妊患者さんや子宮内膜症をお持ちの患者さん、若年で卵巣予備能の低下を来す早発卵巣不全の患者さんなど、難治症例に対しても、積極的に治療に取り組んでおります。早発卵巣不全の患者さんに対しては、ホルモン補充療法を中心として用い、ホルモン値を適正にコントロールする中で、ご自身のホルモンにより発育する卵胞を確認し、採卵を目指しています。
 大学附属病院という利点を活かし、各種合併症をお持ちの不妊患者さんについては、関係他科と連携しながらの治療を行っています。また、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの婦人科疾患を合併している不妊症の方に対しては、その後の不妊治療を見据え、担当医自身が腹腔鏡や子宮鏡を用いた低侵襲手術を行うことで、最大限、妊孕性が保持される様に努力しております。卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)をお持ちの不妊患者さんに対しては、ART治療の採卵時にチョコレート嚢胞の内容吸引を行う事で、チョコレート嚢胞の増悪を回避しつつ不妊治療を継続する治療も行っております。子宮内膜症や子宮筋腫の治療に伴い手術が必要な場合には、入院の上、手術室での手術を行っていますが、この際の主治医も生殖担当医であり、その後の不妊治療まで、継続した診療を行います。子宮内膜ポリープに対しては、細径シェーバー型子宮鏡「TruClear」を導入し、日帰り手術で治療しています。

一般不妊検査・治療
- 不妊症スクリーニング検査(超音波検査・採血・子宮卵管造影・精液検査等)
- タイミング指導
- 排卵誘発
- 人工授精(AIH)


生殖補助医療(ART)
- 体外受精・胚移植(IVF-ET)
- 顕微授精(ICSI)
- 凍結融解胚移植
- 医学的適応による未受精卵子凍結・卵巣組織凍結
- ノンメディカルな卵子凍結


男性不妊外来
泌尿器科ホームページはこちら

生殖補助医療料金表

保険診療の場合

生殖補助医療料金表

自由診療の場合

項目 内容 料金(円)
採卵(精子調整料を含む) 170,000円
採卵不可時(手技料のみ) 20,000円
受精手技料 60,000円
顕微授精手技加算 1個 30,000円
2-4個 60,000円
5-7個 70,000円
8個以上 90,000円
胚・卵子 凍結手技料
(1年分の保管料を含みます)
1-4個 40,000円
5-8個 50,000円
9個以上 60,000円
胚移植手技料 50,000円
凍結胚保管維持料 1年につき 20,000円
融解料 10,000円


 

※これらの他、採卵・移植等にいたるまでに、診察や検査、薬剤使用に伴う費用と消費税が別途発生いたします。

不育症外来の特徴

 妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返してしまい、お子さんを得る事ができない状態を不育症といいます。不育症には多くのリスク因子があると考えられています。当院の不育症外来では、最初に不育症の各リスク因子についての検査(スクリーニング検査)を行い、その結果を踏まえて、治療方針を検討します。
 不育症スクリーニング検査では、以下の表に示す通り、ご夫婦にそれぞれのリスク因子がないかを調べます。残念ながら流産となってしまった場合に、胎児に染色体異常がないかについて絨毛染色体検査を行う事は、流産の原因究明の為に有用です。2回目以降の流産の際には、保険診療で流産手術時の絨毛染色体検査を受けることができます。ご希望の方は担当医にご相談ください。

不育症の原因 主な治療法
子宮奇形 子宮中隔切除術
ホルモン療法など
内分泌異常 ホルモン療法など
抗リン脂質抗体症候群
血液凝固異常(血栓性素因)
抗凝固療法
(低用量アスピリン、ヘパリン)
染色体異常 遺伝カウンセリング
PGT-A/SR
原因不明 不育症カウンセリングなど


 抗リン脂質抗体症候群患者およびプロテインS欠乏症などの血栓性素因を持つ患者さんに対しては、アスピリン・ヘパリン療法を中心とした抗凝固療法を行い、約85%の累積妊娠率を得ています。
  ご夫婦のいずれかに、染色体相互転座等の染色体構造異常を持つ患者さんに対しては、遺伝診療部での遺伝カウンセリングを受けていただき、ご希望に応じ、着床前遺伝学的検査(PGT-A/SR)の施行を検討致します。
  また、新たな検査として、次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査やネオセルフ抗体検査等も施行も可能となっています。

がん・生殖医療について

 若い患者さんに対するがん治療(手術・化学療法・放射線療法等)は、その内容によっては卵巣や精巣の機能喪失(性腺機能不全:卵子や精子の喪失・内分泌機能の喪失)につながるものであり、これらにより将来子どもを持つことが困難になる(=妊孕性の喪失)可能性があります。
  がん治療において、医療者と患者さんにとっての最大のゴールは、病気(がん)を克服することであるため、以前はがん治療に伴うこれらの問題点には目をつぶらざるを得ませんでした。 しかしながら、近年のがん治療技術の飛躍的な進歩の結果、今や多くのがんは致死的なものではなくなり、がん克服後に長期の生存が期待できる若年患者さんの数は増加しています。このような背景から、現在では、がん治療後の患者さんの生活の質(QOL=quality of life)にも目が向けられるようになってきました。このQOLには、がん克服後の妊娠・出産も含まれ、治療後の妊娠の可能性(妊孕性)を温存するための治療(妊孕性温存療法)が広く普及してきています。妊孕性温存療法には種々のものがありますが、最も代表的な治療として精子や卵子、受精卵(胚)の凍結保存が挙げられます。最近では卵巣を組織ごと凍結保存して、がん治療の終了後に再度体内に移植する治療も、臨床研究としてではありますが施行されています。
  当院では、現在がん治療を受けている方やこれからがん治療を受ける予定の患者さんを対象に、原疾患(がん)の主治医よりご紹介いただき、患者さんよりお話をうかがった上で、がん治療による妊孕性の低下・喪失の可能性について、また、妊孕性温存療法施行の可能性・必要性についてご説明させていただく、がん生殖医療カウンセリングを行っております。このカウンセリングの結果、妊孕性温存治療を希望される患者さんについては、その後、当院での治療も行っております。

当院で可能な治療・カウンセリング

  • がん治療前後での妊孕性温存に関する相談およびカウンセリング
  • 卵子凍結
  • 精子凍結
  • 胚(受精卵)凍結
  • 卵巣組織凍結(臨床研究)


    妊孕性温存の方法については以下のリンクをご参照ください。

http://www.j-sfp.org/fertility/fertility.html
http://www.j-sfp.org/ped/

 方針の決定にあたっては、がん治療についての詳細な情報が欠かせません。予定されている治療内容やそのスケジュールを確認させていただくため、がん治療の主治医の先生より生殖外来へ直接お電話をいただき、カウンセリング日を決定しております。  患者さんが直接ご相談を希望される場合には、腫瘍センターのがん相談センターにご連絡をお願いします。

費用について

項目 内容 料金(円)
カウンセリング料(初診時のみ) 10,000円
精子凍結 20,000円
採卵(精子調整料を含む) 170,000円
採卵不可時(手技料のみ) 20,000円
受精手技料(ご夫婦の場合) 60,000円
顕微授精手技加算(ご夫婦で顕微授精を要する場合) 1個 30,000円
2-4個 60,000円
5-7個 70,000円
8個以上 90,000円
卵子・胚 凍結手技料
(1年分の保管料を含みます)
1-4個 40,000円
5-8個 50,000円
9個以上 60,000円
凍結卵子・胚保管維持料 1年につき 20,000円



※これらの他、採卵・移植等にいたるまでに、診察や検査、薬剤使用に伴う費用と消費税が別途発生いたします。
※2021年4月から助成金(小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存に係る経済的支援)が開始されました。詳細は外来スタッフにお尋ねください。
※がんや疾患治療後の生殖機能のフォローアップ・カウンセリングも行っております。

 当院で可能な診療
- がん治療後の月経異常の相談
- 早発閉経後のホルモン療法
- がん治療後の生殖カウンセリング

ノンメディカルな卵子凍結について

 女性は健康であっても年齢とともに生殖能力の低下をきたすことが知られています。年齢と共に卵子は減少していきますし、卵子の質(正常な受精卵を得られる可能性)も低下していきます。このような加齢に伴う妊娠可能性の低下に備える方法として、生殖補助医療技術を用いた若年時の未受精卵子凍結保存があり、ノンメンディカルな卵子凍結や社会的卵子凍結、選択的卵子凍結などと呼ばれています。日本産科婦人科学会は「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」という動画を作成し、そのプロセスや考え方、注意点について詳しく解説していますので、卵子凍結を考えている患者さんは是非1度ご視聴ください。
  (こちらのQRコードから動画が視聴可能です。)


 当院ではご自身の卵子凍結を希望する満18歳以上の方を対象として、ノンメディカルな卵子凍結を行っています。この治療にあたっては、日本生殖医学会の「医学的適応のない未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存について」というガイドラインを遵守し、医師による医学的判断のもと、患者さんともご相談の上、凍結保存を行うかどうかを決定しています。日本生殖医学会のガイドラインには、36歳以上の卵子凍結及び45歳以上の不妊治療は推奨できないことが明記されています。
 卵子凍結には以下に挙げる様なメリットおよびデメリットがあります。学会の動画も含め、良くご理解いただいた上で、治療を受けるかどうかを考えていただきたいと思います。詳細については、外来で担当医にご確認ください。

(1) メリット
 ① 採卵時点での卵子の質を確保し、将来の卵子の量の低下に備えることができる。
 ② 不妊の原因となる病気にかかる前に将来の妊娠に備える効果がある。

(2) デメリット
 ① 現時点での医療技術では、卵子凍結を行っても将来の妊娠・出産は保証されない。
 ② 採卵時の年齢と確保できる凍結卵子数により赤ちゃんを得られる可能性は異なる。
 ③ 年齢が高くなってからの妊娠・出産は母体にも赤ちゃんにも様々なリスクがある。
 ④ 凍結保存卵子を使用した妊娠のためには、体外受精・胚移植治療が必要となる。
 
 

料金

項目 内容 料金(円)
採卵 170,000円
卵子 凍結手技料
(1年分の保管料を含みます)
1-4個 40,000円
5-8個 50,000円
9個以上 60,000円
凍結卵子 保管維持料 1年につき 20,000円


  ※これらの他、採卵にいたるまでに、診察や検査、薬剤使用に伴う費用と消費税が別途発生いたします。

当院での治療をご希望される方へ

 当院の生殖内分泌外来に初めての受診を希望される方は、月曜日から金曜日までの午前8時30分から11時の間にご来院ください。前医よりの検査結果や治療結果が記載された紹介状をお持ちの場合には、ご持参いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 紹介状をお持ちでない初診のかたもご受診いただくことは可能ですが、その際には、医療費とは別に、選定療養費として7,700円(税込)をお支払いいただくことになります。
 当科では、曜日担当医制で診療を行っておりますので、常に同じ医師による診療をお受けいただく事はお約束しかねます。また、土曜日は再診のみとなり、交代制での診療を行っております。日曜日は休診です。
 人工授精、体外受精などの治療を行う場合には、男性にも採血による感染症検査(自費)を受けて頂きます。この際には、男性も受診の上、当科カルテを作成させていただきます。
 当院で生殖補助医療を行う前には、ご夫婦で生殖補助医療について説明した動画の視聴をお願いしております。
 凍結胚の更新手続きの際には、ご夫婦での受診をお願いしております(卵子・精子凍結の更新手続きはご本人さまのみ)。

診療スタッフ

診療部長

岡本 愛光

診療副部長

佐村 修

診療医長

矢内原 臨、岸 裕司、柳田 聡、竹中 将貴

診療医員

伊藤 由紀、佐藤 琢磨、片倉 和香子、岡 和彦、奥村 侑子、蓮沼 綾子

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