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研究者の現場

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2025年01月20日

ビタミンD特集 
がん患者さんの再発や死亡を抑える可能性に注目されるビタミンD
東京慈恵会医科大学 分子疫学研究部   教授 浦島 充佳

検体の確認をしている浦島教授

がん患者さんの再発や死亡を抑える治療法として、ビタミンDサプリが注目されています。

この可能性を探るために臨床試験を実施し、検証しています。

ビタミンDサプリでがん患者さんの再発・死亡を抑える

~太陽神 天照大神から名付けた「アマテラス試験」~

みなさんは、ビタミンDが骨の健康に重要な栄養素だとご存じかもしれませんが、近年ではがん患者さんの再発や死亡を抑える可能性がある栄養素としても注目されています。この可能性を探るために、「アマテラス試験」と名付けた臨床試験を実施し、現在はその第2弾を進めています。

ビタミンDサプリががん治療に使えるか?

そこで、2010年1月に「アマテラス試験」を開始しました。この試験では、消化管がんの患者さんを対象に、ビタミンDサプリが再発や死亡に与える影響を検証しました。結果として、プラセボ(治験薬に色や味を似せた薬効を持たない偽薬)・グループと比べてビタミンDを摂取したグループでは再発や死亡のリスクが8%減少していましたが、統計的に有意な差は得られませんでした。また、ハーバード大学で同時期に行われた試験でも、ビタミンDサプリががん死亡を25%も減少させる可能性が示されましたが、これもまた確実な結果には至っていません。

p53遺伝子変異に注目

その後、アマテラス試験のデータを詳細に分析した結果、ビタミンDサプリが「p53」というがん抑制遺伝子に異常がある患者さんに特に効果がある可能性が示されました。がん患者さんの約半数にp53遺伝子の変異が見られ、これによりがんの再発や死亡リスクが高まります。ビタミンDサプリがこのような高リスクのがん患者さんに対して有効である可能性が示されたのです。

アマテラス2試験の開始

これらの結果を踏まえ、2022年1月から「アマテラス2試験」を開始しました。この試験では、肺、大腸、肝臓、胃、乳腺、食道、膵臓、頭頸部のがん患者さん、特にp53変異陽性のがん患者さんを対象に、ビタミンDサプリが本当に再発や死亡を抑えるかどうかを検証しています。

慈恵大学研究の原点

学祖 高木兼寛のビタミン研究が高く評価され
南極大陸には「高木岬」という地名が命名されました

学祖 高木兼寛の遺志を受け継いで

かつて日本では、ビタミンB1の不足により脚気という病気が流行し、多くの命が失われました。慈恵大学の創設者である高木兼寛は、ビタミンという栄養素が発見される遥か昔に、胚芽にビタミンを含む麦飯を推奨することで脚気の発症と死亡を劇的に減少させ、ビタミンという栄養素の重要性を示しました。

私はこの先駆者の遺志を受け継ぎ、ビタミンDサプリによるがん治療の可能性を追求しています。アマテラス2試験の成果が、がん患者さんの再発や死亡を防ぐ新たな治療法となることを目指し、これからも研究を続けてまいります。

ビタミン研究の開拓者 学祖 高木兼寛

学祖・高木兼寛は、「ビタミン研究の開拓者」として日欧米においても高い評価を受け、昭和34(1959)年には、英国の南極地名委員会によって南極大陸に「高木岬」という地名がつけられました。

東京慈恵会医科大学 分子疫学研究部
教授 浦島 充佳
1986年東京慈恵会医科大学卒業後、附属病院において骨髄移植を中心とした小児がん医療に献身。93年医学博士。94~97年ダナ・ファーバー癌研究所留学。2000年ハーバード大学大学院にて公衆衛生修士取得。2013年より東京慈恵会医科大学教授。
小児科診療、学生教育に勤しむ傍ら、分子疫学研究室室長として研究にも携わる。 専門は小児科、疫学、統計学、がん、感染症。 現在はビタミンDの臨床研究にフォーカスしている。またパンデミック、 災害医療も含めたグローバル ・ ヘルスにも注力している。 小児科専門医。

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