2022年05月01日 現在
日本国民の2~3人に1人は何らかのアレルギー疾患に罹患しており、患者数が急速に増加しております。アレルギー疾患対策基本法が2014年6月に成立、2015年12月に施行され、アレルギー疾患対策は重要な国策の一つになっております。
2019年2月に当院はアレルギー拠点病院に選定されました。当院では診断が困難な症例や、標準的治療では病態が安定しない重症・難治性のアレルギー疾患患者に対し、専門的な医療を提供する病院として役割を担っております。また東京都と協力して、研修などによる医療従事者などの人材育成や患者・家族などへの普及啓発などを中心的に行っております。
アレルギー疾患は生後まもなくから発症することが知られています。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は新生児期・乳児期早期から発症し、2~3歳で気管支喘息、そしてアレルギー性鼻炎・結膜炎が発症します。当アレルギー外来は、アレルギー専門医により包括的なアレルギー診療を行い子どもたちの全身アレルギー診断・治療を実践します。
どのようなアレルギー性疾患でも、早期診断・治療がとても重要になります。たとえば「湿疹がなかなか良くならない」時には、早期受診をおすすめします。
診療医長/准教授 田知本 寛
食物アレルギーは0歳代に発症することが多く、およそ10人に1人が発症しています。食物アレルギーには表のようなタイプがあります。なかでも食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎型が多く生後早期に発症しています。乳児湿疹と診断されたもののなかなか改善しない乳児の中にこのタイプの食物アレルギー児が隠れていることがあります。まずは、スキンケア指導を行い症状の改善が得られないとき、その原因を追及します。食物アレルギーが疑われれば「正しい診断に基づいた必要最低限の食物除去」を基本に最低限の食物除去を行います。
食物アレルギーの患者さんは原因食物を誤って食べてしまうと、表に示した症状が30分以内に、遅くとも2時間以内に現れます。皮膚症状が最も多く、中には重篤な症状を示す場合もあります。
一度食物アレルギーと診断されてもご安心ください。およそ80%の症例は耐性獲得といって食べられるようになります。食物アレルギー診断された児は、専門外来に通院していただき耐性獲得を目指しています。食して症状のある期間は、日常生活していく上での注意点を指導させていただきます。
食物アレルギー診療の手引き2017
臨床型 | 発症年齢 | 頻度の高い食品 | 耐性の獲得 (寛解) |
アナフィラキシーショックの可能性 | 食物アレルギーの機序 | |
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新生児・乳児消化管アレルギー | 新生児期~ 乳児期 |
牛乳(育児用粉乳) | 多くは寛解 | (±) | 主に非IgE依存型 | |
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎(FA/AD)※ | 乳児期 | 鶏卵、牛乳、小麦、大豆など | 多くは寛解 | (+) | 主にIgE依存型 | |
即時型症状(じんましん、アナフィラキシーなど) | 乳児期~ 成人期 |
乳児~幼児 学童~成人 |
鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは寛解しやすい そのほかは寛解しにくい |
(++) | IgE依存型 | |
特殊型 | 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn/FDEIA) | 学童期~ 成人期 |
小麦、エビ、イカなど | そのほかは寛解しにくい | (+++) | IgE依存型 |
口腔アレルギー症候群(OAS) | 幼児期~ 成人期 |
果物・野菜など | そのほかは寛解しにくい | (+) | IgE依存型 |
※慢性の下痢などの消化器症状、低蛋白血症を合併する例もある。全ての乳児アトピー性皮膚炎に食物が関与しているわけではない。
食物アレルギーの診断・耐性獲得の確認には食物負荷試験が不可欠です。血液中のIgE測定や皮膚テストは参考になりますが、最終診断は食物負荷試験(あるいは食したエピソード)の結果によります。食物負荷試験は入院で行うことが基本ですが、主治医が可能と判断した時のみ外来食物負荷試験を行うことがあります。くわしい方法については受診時にご説明いたします。
アトピー性皮膚炎は、かゆみと伴う湿疹が寛解(良くなること)・増悪を繰り返すアレルギー疾患です。アトピー性皮膚炎のかゆみは非常に強く、睡眠を妨げるなど日常生活の質を下げてしまいます。
アトピー性皮膚炎は慢性に経過するため、治療にはある程度の期間が必要になりますが、適切な治療により症状のコントロールが可能で、患者さんとそのご家族のQOLを大きく改善することが期待できます。
気管支喘息は息を吐く時にゼイゼイ、ヒューヒューという音が聞こえ呼吸困難となる病気です。気管支喘息は、空気の通り道である気道が炎症を起こすことが原因で起こる病気です。炎症によって、気管支の壁がただれたような状態になったり、腫れてしまうことで、空気の通り道が狭くなり、それが原因で呼吸が苦しくなってしまうのです。
ホコリやウイルス感染、運動などで喘息発作が出てしまいます。気管支喘息の治療は気管支の炎症を抑え、発作の起こらないようにします。小児気管支喘息治療管理ガイドラインに示されている小児ぜんそくの治療目標は、6つの項目があり、ここにあるすべてが達成されることを目標に治療をすすめています。
すべての項目が重要なのは言うまでもありませんが、特に注目していただきたいのは5つめに記載されている『スポーツを含め、日常生活を普通に行うことができる』という項目です。
小児アレルギー疾患 | 食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息 花粉症、じんましん、新生児・乳児消化管アレルギー |
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その他の免疫疾患 | 好酸球性胃腸症、好酸球増多症、木村病 |
その他の非免疫疾患 | 逆流性胃腸炎、副鼻腔炎 |
呼吸器系 | ぜーぜー・ヒューヒューする、呼吸したときに変な音がする、咳がとまらない、鼻汁がひどい |
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皮膚系 | 皮膚がかゆい、発疹・湿疹がひどい |
その他 | 体重の増えが悪い |
No |
専門外来枠名称 |
概要 |
外来診察日 |
主な担当医師 |
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1 |
小児アレルギー外来 |
小児食物アレルギー・アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性鼻炎の診断と治療 |
月曜日(午後) |
田知本 寛 |